第五回:リスクとリターンの関係性②
今回はリスク・リターンの2回目ということで大きく3点ふれていく
1.リスク・リターンの計算
2.リスク・リターン計算にあたっての統計学
3.リスク・リターンを測る指標と関連概念
1.リスク・リターンの計算
まず基本的なリターンの求め方についてだが、以下の式になる
r= (Rend-Rbgn+dividend-intial cost) / Rbgn
ではリターンがどれほどかを測る指標はどのようなものがあるか?
代表的なものとしては
excess return という考え方がある。
これは得られるリターンがリスクフリーに比べてどれくらい高いかを示している。
リスク・プレミアムもこのexcess returnに内包されるものである。
また、リスクとリターンの間には正の相関があるという仮定が置かれている。すなわちリターンに応じてリスクが伴うという考えである。
ではこのリスクについてはどのように測るか?
このリスクを測るパラメーターがまさしくσである。これは二乗をとれば分散となり、通常のσは各サンプルの平均との乖離を示す標準偏差となる。
これらのリスクという指標を確率論的に結びつけるのが統計学であり、代表的なものとして正規分布による分析が行われる。
この正規分布については別の回で詳しく取り上げる
繰り返し述べてきたように、標準正規分布はその簡易性から採用されてきた。
しかし現実として金融市場におけるリスク計算は正規分布どおりにはならない。そこでいくつかより現実に近いと思われる指標や理論が取り込まれた。ただし、これらの指標が万能かといえば決してそんなことはない(リスクの度合が測れない)。
まずそもそもリスク・リターンのバランスを測る指標は何かから始めるとそれこそが
シャープ比率(Sharp Ratio)である
シャープ比率は以下の式で与えられる。
Sharp Ratio = Risk Premium / σ of excess return
ではこれらをふまえた上でリスク・リターンの現実との乖離について言及していく。現実としてリターンについては正規分布が示す以上にネガティブなリターンの確率が多く出現しているように思われている。
これを測る指標としてまず歪度があげられる。
これは一言でいえば正規分布がどれくらい左寄り、あるいは右寄りか。歪度が正ならそれだけプラスに偏っているからプラスリターンが過小評価されていることになる。
歪度は以下の式で与えれる。
Skew = Av. [(R-Rbar)^3/σ^3]
もう一つ別の指標として尖度があげられる。
これは一言でいえば正規分布がどれくらい鋭いか。鋭ければ鋭いほどぶっとんだ結果が起こりうる可能性が高くなる(CDFが1になること、対称性が維持されることを考えたら必然と両サイドの確率が高くなる)
いわゆるFat Tailを測る指標でもある。
尖度が高ければ高いほどぶっとんだ結果(異常な利益や損失)が起こりやすくなることを示唆する
公式は以下のとおり
Kurtosis = Av. [(R-Rbar)^4/σ^4]
次にネガティブリターンが現実よりもたくさん表れていることを説明する3つの概念について以下取り上げていく。
1.VaR
VaR(Value at Risk)を簡潔に説明するとある一定のリスク水準(通常は有意水準5%以下)における損失リスクを示したものである。(ある意味5%以下であれば、5%のときのリスクを示すため、そのリスク水準の中ではleast scenario となっている)
式は正規分布に基づいて以下のようになっている
VaR = μ- ND(α) *σ
αは信頼区間に依拠する数字であり、例えば両側5%であれば1.65、片側5%ならば1.96となる。信頼区間についても統計学を参照
2.Expected Shortfall
期待ショートフォールとは1のVaRをさらに想定シナリオ以下の全てのケースを反映して加重平均的に算出する
3.LPSD
LPSD(lower partiial standard deviation)はいわゆるリスクフリーリターン以下となるネガティブリターンのみを使って算出した標準偏差である
これは
a.分布の非対称性からネガティブリターンは個別に議論するべき
b.リスクはリスクフリーと比較して算出されるべき
c. fat tailは考慮されるべき
という3つの点を考慮して考案された
また標準偏差のかわりにLPSDを用いたものをSortino Ratio(ソルティノレシオ)という。
簡潔だからこれでとりあえず2回にわたるリスク・リターンを終わりとする