吉野家とマックをこよなく愛する外資金融マンwww

目的は利他的、されど体裁は利己的。矛盾。くそ。

第一回:ファイナンスへの誘い

ここから数回は金融市場の導入について自分なりに解説していく。とりあえず今回は2009年のリーマンショックについて触れながら今後さらに踏み込んでいく領域についても言及していく。(何事も第1回は気合いがはいるもの。今後はどうせ失速する

 

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そもそも金融市場とは何か。僕的に簡略化させてもらうと

 

プレイヤーによるモノの取引ゲーム。あとはプレイヤーの数、モノの形態によってゲームが複雑化し、お金という共通価値基準によって勝者と敗者がそれぞれの目的に応じて決定されていくというふうに考える(企業や投資家ならより高い収益性、政府ならバランスのとれた市場など)。

 

どんなゲームにも仮定がある。このゲームでの仮定は一応次のように定められているとする。

 

・リスクに応じたリターンが設定されている(←後の別記事にCAPMモデルなどとあわせて詳しく説明)

goldninjass.hatenablog.com

 

・タイムラグがあるにせよ、市場は正確に効率よく情報を反映する

goldninjass.hatenablog.com

 

 金融市場におけるモノとはまさしく資産のことをさす。

資産というものは大きく分けて実物資産金融資産の二つがある。実物資産はそのまま。土地や建物。あとは特許とかも。金融資産はそうした実物資産の保有の権利に関連して生まれる資産をさす。

Zvi BoideによるInvestmentsから引用すると、

Real assets create wealth. Financial assets represent claims to parts or all of that wealth. Financial assets determine how the ownership of real assets is distributed among investors.

 

また金融資産はその特性に応じてさらにfixed asset, equity, derivativeに大別することができる。fixed assetは債権のように決まったリターンが見込めるような金融資産をさす。equityは株式のように企業などの第三者によってリターンが変動するようなものをさす。fixed assetよりもリスクが高いため当然リターンも高くなる。

 

プレイヤーとしてはミクロ・マクロ経済と同様に政府、家計、企業の3主体がある。

ただし家計というと少し語弊があるため、ここを投資家に置き換えるとわかりやすくなる。厳密には機関投資家のように企業と投資家を兼任するようなものもあるがここではあくまでのざっくりと。

 

この中での投資銀行というのはこうした金融市場のシステムを理解するプロとして、投資という形で主要収益を生み出している 

そして投資という観点からこの投資銀行が収益をあげる戦略を示したものがポートフォリオ選択である。ポートフォリオ選択には主に2つのフェーズがある

1.資産選択(どの金融資産をどれほどの割合選択するか)

2.より詳細な証券選択(銘柄など)

 

資産選択やポートフォリオ構成についてものちのちの回で随時解説していく。

 

 

 

この金融市場という取引ゲームが根底から大きく揺れ動かされたのが2009年のリーマンショックである。ここでは軽くその全容について述べるとする。

 

リーマンショックが起きた主な原因としてはざっと2つ。

 

住宅バブルと金融システムそのものの欠陥

 

まず住宅バブルが起きた一連の流れにはその前に起きたITバブルを頭にいれておく必要がある。ITバブルが弾けた際にアメリカ政府は金利を下げることによってこのバブル崩壊後の経済に歯止めをかけた。それだけではなく、アメリカ経済は回復の兆しをみせ、人々はマクロ政策の有用性に対して確信していた。この流れがあって、住宅の価格が上昇していった。

ここまでは普通の話。じゃあ何が普通じゃなかったかというとこの後の話。

 

通常家を買ったり、借りたりする時は住宅ローンを組んで徐々にお金を利子と共に返済していく。ここでは家を借りた人と住宅ローンを融資した人の2者にプレイヤーは限定される。しかし当時のアメリカではこの簡単な構図が複雑化したことによって後の大惨事が引き起こされた。どう複雑化したか?

 

それは関わる債権者の拡大と住宅ローンを組める人の幅の拡大である

 

前者の、関わる債権者の拡大は一つの住宅ローン債権(以下モーゲージ債)に関わるプレイヤーの数が増えたことを意味する。もとは借りた人と住宅ローンを融資する人と2人のプレイヤーだった。しかしここで当時のアメリカではさらに住宅ローンを融資した人から債権を買い取った機関が現れた。彼らは元々住宅ローンを融資した人にプレミアムを払うことによって債権を売ってもらった。そうしたことを何度も繰り返し、彼らは同じ償還期限や金利のついたモーゲージ債を一つのプールにまとめてそれらをモーゲージ債として証券化した。この証券化したモーゲージ債をかれは投資家にさらに売買したのである。

 

後者の住宅ローンを組める人の幅の拡大は単純な話。お金を貸す際に当然リスクはつきもの。返せる見込みのない人には貸さない(デフォルトなんてされたらたまらないから)。だから通常は貸し出す際の基準がある。しかし先ほど述べたように当時のアメリカは住宅バブル真っ只中。今日$2000の物件が明日には$2500になってる世界。多少基準をゆるくしても返せるんじゃん?そんな心理から生まれたのがよりリスクの高い住宅ローンの債権であるサブプライムローンである。

 

しかしこれだけでは腑に落ちないところがあるはず。たとえリスクの高いサブプライムローンができたとしてもそんな危ない債権を誰が買うのか?この疑問を解消し、先述した二つの拡大を調和させた魔法がCDO(collaterized debt obligations)という金融派出商品(デリバディブ)である。

 

簡潔にこれがどんな魔法だったかを述べると、

プールの中に信用の高いモーゲージ債と危険なサブプライムローンを混ぜて、信用性の高いものから支払っていくシステムを採用することによって、くっそみたいなサブプライムローンを最も信用度の高いAAAの債権へと変身させた

 

これについてはまた別の回にCDOとあわせて詳しく言及していく。また、これには投資家がプールの中身を確認できなかったという不透明性があったという前提がある上で成立するトリックである。

 

こうした経緯を経て、サブプライムローンが形成された。

goldninjass.hatenablog.com

 

 

次に金融システムそのものの欠陥だか、これは単純な話である。

当時の金融機関は短期間の借入を低い金利で調達し、それを高リターンの長期のものへと投資することで資産運用をしていた。また、どの金融機関も高いレバレッジ(メリルとかリーマンは30:1(資産のうち自己資本は3%のみ))をかけていた。逆にいえば、これは短期間で借り入れたものが返済できなければ崩壊してしまう危険なシステムであった。

 

ではここで金融機関の借入金が先ほどのモーゲージ債を担保にしていたとしよう。住宅価格が上昇し続けてるときはいい。でももし、もしこのモーゲージ債が今にも返済ができなくなってしまうような危険な債権だったって分かった瞬間どうなるでしょう?

結果は火をみるより明らかである。

 

上昇し続けた住宅価格が下落する→モーゲージ債が下落→投資業務をやっていた銀行はお金を回収できなくなる→巨大な赤字をだす→資金やりくりができなくなる→倒産

 

これが鎖のようにつながれていた金融市場の各プレイヤーたちに次から次へと波及していき、多くの投資業務に携わっていた会社、そうした会社からお金を借りていた会社、そうした会社と関わりを持ってる会社といったようにアメリカ経済は大打撃を受けた。

これがリーマンショックである。

 

ちょっとリーマンショックの話が長くなったが、これからはしばらく何回かはここで紹介された金融市場の構成パーツについて解説していこうと思います。次回は資産です。