吉野家とマックをこよなく愛する外資金融マンwww

目的は利他的、されど体裁は利己的。矛盾。くそ。

第27回:限界費用ゼロ社会を読んで

今回紹介するのはこちらの本

 

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ちょっと長めで読むのは苦しかったけど、内容は大変満足のいくものだった。

 

まず端的に内容を示すと、

 

テクノロジーがどのように世の中を変えていくかを考察

 

こんな本たくさんあるよねって話。じゃあこの本の特色はというと

 

体系的にパラダイムシフトというものがどのようにして起こるのをかを歴史的な考察をふまえて説明し、今回のテクノロジーによるパラダイムシフトをその枠組みの中に落とし込んで考察している点である。考察にあたっても3Dプリンター、大規模オンライン講座であるMOCCなどパラダイムシフトを可能にする個別要因のインパクト、そして共有型社会への移行が世の中や人々の価値観をどのように、そして変えるためにはどのような条件が必要かを全体レベルでも取り上げている点。

 

内容の要約をすると、

 

パラダイムシフトが起こる条件としてコミュニケーション、エネルギー、輸送という3つのインフラにおける変革をあげ、今回のテクノロジー革命においてはそれぞれの変革要因としてインターネット、再生可能エネルギー、IoTを取り上げている。またこれらのインフラの効率化に加えて3Dプリンターなどの発達による極限生産性の達成、およびそれによって様々なフィールドにおけるオープンソース化によって生産者であり、消費者でものあるプロシューマーの出現がする。こうした変化が既存の資本主義システムを衰退させる局面もみられるようになって共有型社会への移行が徐々に進む。この移行はこれまで稀少性を基盤として私有財産制、中央集中型の利潤追求によって特徴付けられた資本主義とは異なった価値体系を生み出す。この共有型社会は潤沢性を基盤として協働して物事を生産して管理して地球全体をひとつのコミュニティーとしてみるその中でシェアリング精神に基づいた社会福祉貢献というものが価値をもつようになる

 

以下いくつか細かく紹介すると、

 

パラダイムシフトにおける3つの要因

 

まずパラダイムシフトを可能とする要因として3つ挙げられる。それはコミュニケーション媒体エネルギー体制、そして輸送インフラにおける技術革新である。エネルギー革命がその経済の動力源となるエネルギーのありかたが変化することによって時間的・空間的広がりが起きて複雑な生活様式を可能にする。しかしこれはエネルギー変化のみでは起こらず、エネルギーの変化と同時にそのエネルギー体制において人々がコミュニケーションする媒体、およびシステムを支える輸送システムの変化も伴う。

 

これは長い歴史において常に見られてきた。

 

まず初めに人間は狩猟・採取に基づいた移動型の生活を送っていた。その後大河に恵まれた地域が巨大な文明を築く始めた。当時の人々は人間の身体そのものがエネルギー源であり、それらに基づいて水路を持ち他集中制御型の灌漑農業体制を作り上げた。またこうした農業体制に移行したことによって人々は定住するようになり、地域ごとにおいて統制されるようになった。これらの統制を可能にしたのが文字の発明による意思疎通である。こうした定住によって人々は集落を作り、これが人間の組織作りの歴史の原点となる。こうした集団における組織形成は次第に発達していき、人間の身体に基づいたエネルギー体制は牛馬や農奴によって支えられるようなシステムへと発展していった。また、文字の発達、およびそれらを本として記憶するなどの応用がみられることで地域を超えて宗教などに代表される神話的意識でつながるようになった。こうした意識を反映して人々は神によって創造された世界という神学的な統治枠組みのもと、人々がヒエラルキーの中でそれぞれの役割をこなしていく中世の封建社会へとなった。しかし時代が進むにつれて人口増加が加速して食料に対する需要が高まっていくと、富者の貧者に対する革命とも言われるように、封建社会を支配していた神学的な統治枠組みが崩れ始めた。ここで近代の資本主義にみられるような私有財産といった概念が誕生し、次第にこうした代々先祖より受け継がれてきたはずの土地に対して支配するものと支配されるものという構図が顕著になり、それぞれにおける囲い込みが始まった。こうした気運に加えてエネルギー源として石炭が実用化されたことによって資本主義社会が発達していった。動力源として石炭が機械を動かし、これらの機械は従来の人間の労働力の何十倍もの能率を誇った。さらにこうした石炭がエネルギー源として定着したことによって蒸気機関車という輸送手段が可能となり、より広範な地域をつなげていった。また、蒸気で動く印刷機も発明されたことによって人々のコミュニケーションがとてつもなく加速した。次に第二次産業革命といわれるように20世紀前半から石油が主要のエネルギー源として出現した。石油の採掘は大変多額を要するものである。それゆえ投資サイクルの関係上、一事業者では資金調達が行えないため株式会社という形で資金を調達するようになった。さらにこうした株式会社の出現によって株主へのリターンを生み出す必要性が生まれたが、それを実現するためには石油の採掘からエネルギー源としての調達まですべてまとめて管理する業態が理にかなっていた。この結果誕生したのが巨大複合体である。また少し話がそれたが、こうした石油事業の発展に伴って、自動車という新たな輸送手段も誕生し、さらに電話やテレビといった発明がコミュニケーション形態を変化させた

 

では今回はどのような変化が起きているのか?あるいは起こるのか?

 

テクノロジーの発達によってまず新たなエネルギー源として再生可能エネルギーが急速に発達する。これはスマートグリッドなどによる効率化に加えて3Dプリンターといった技術によって太陽電池などの設備が大量生産できるようになり、無尽蔵の自然エネルギーを利用することによって限界費用が長期的にゼロに限りなく近づいていくのである。また、通信手段としてのインターネットは今では世界中のどの地域も素早くつなぐ力がある。またIoTの発展によって全てのヒトとモノが一つの巨大なシステムで効率よく管理されつつ、各々は再生可能エネルギーに支えられて分散化・水平展開する社会になる。

 

次に今回起こるパラダイムシフトに関する具体的な変化やその変化の要因となる技術革新について。まず3Dプリンター。3Dプリンターは簡単にいえばスクラッチからものを生み出すことを可能とする。もちろん材料的な制約は現段階ではあるが、今後発達が予想される。また、1番の特徴としてこれまでの製造過程のようなsubtractional 方式ではなく、層ごとに製造していくadditional方式であるため無駄が少ない。3Dプリンターが発達すれば製造業のあり方が今とはまったく違ったものに変容する可能性がある。サイズが大きくなれば車や場合によっては建築も3Dプリンターによって実現可能となる。さらに再生可能エネルギーの発展に伴い、3Dプリンターによって太陽光パネルがどこでも生み出せるようになる。また、どこでもだけでなく、インターネットの力でもしデータのオープンソース化に伴い製品を製造するためのプログラムがネットで流通すれば“誰でも”生産できるようになる。これは消費者が製造者にもなるプロシューマーという共有型経済ならではの新たなポジションを生み出す。また話を3Dプリンターに戻すと、3Dプリンターの技術発展とこうしたプロシューマーの出現によって製造業に関してはモノを限りなく限界費用ゼロで生産できる時代がやってくる。これは前述したように利ざやを収益として機能する資本主義経済における企業のありかたを変化させる可能性も大いにありうる。

 

ではここで問題としてこうしたテクノロジー革命の変化のスピードがこれからも続くか?そしてどのような広がりを見せていくかであるが、この問題を考察するには教育と思想、および労働に注目すればよい。

 

結論を端的にいうと、共有型経済が台頭するにつれて価値観も変化していくため、教育の形態も中身も変化する。形態はすでに変化がみられている。その例の最たるものがMOCC(Massive Open Online Course)である。MOCCによって従来は”カネがものいう教育”から誰でもトップレベルの教育水準を世界中どこでも受けられるという水平化が実現されつつある。また教育の内容としても、これまでは大半の職種で”よき生産者”が求められた資本主義経済とはまったく異なった基準で評価される人材育成になる。これは企業にも通ずるところがある。職種の多くが3Dプリンターの発達とオープンソース化の進展によるプロシューマーの台頭によって失われる。そもそも先述したように企業そのものも変化を求められる。教育および企業に求められる人材は”how”を身につけられる人材から"Why"を追求できる思考を身につけられる人材に代わる。これは共有型経済に移行するにつれて自分の知を大きな集合体におけるものとして捉え、その集合体において創造性を働かせて他の共有された知識や視点を組み合わせて相乗効果をみつける力を身につける必要がでてくる

  

最後に現代の資本主義の世の中においてテクノロジー革命が進行することによってどのような変化が起こるか

 

端的にまとめると

 

1.資本主義と共有型経済の戦い

資本主義は既存の権益ゆあシステムを守るために変化して迫り来る共有型経済のイノベーションによる変化を阻もうとする。

 

2.共有型経済の台頭における新たな価値観の誕生

何度から言及しているようにインターネットの出現、3Dプリンターによる極度生産性の実現、そしてこうした技術に支えられ、新たな経済の根幹となる再生可能エネルギーの発達によって水平化と分散化が進んだ社会へと徐々に移行すると思われる。また、こうした社会の台頭に伴って思想的にも制度的にも

 

個としての利益追求→全体としての 社会福祉の改善

市場資本→社会関係資本

所有→アクセス

 私有財産オープンソース

 

といった移行が徐々に進行していく。

 

最後の方、疲れてまとめがくっそ雑になってしまいましたけど、なんとなくのコンセプトが伝わればと思います。

テーマが広範のものなんで、こうした移行における企業評価やそのありかた、教育や近在に求められる能力といったように個別で議論できる点はもた熟考できればなぁと思います。

 

最後まで読んでくれた人はどうもです