第22回:バリュエーション②
次にまたゴリゴリな手法の一つであるEarning-based Valuation Model の紹介である。
ここで復習を兼ねて整理すると、これまで紹介したDividend Discount Model、当サイトでは取り上げなかったCashflow Valuation Modelについてもそうだが、本質的なところとしてすべて企業の収益性に関するバリュエーションを行っているのである。
これは結局企業というのは株主資本によって成立し、その株主たちが自分たちが出資した額(リスク)に対してどれくらいのお返し(収益性)を期待できるかという以前紹介した資本主義の根本的な価値観に基づいているからである。その過程で企業の収益性を生み出す主体である企業というものを分析するのである。つまり最終的なアウトプットとしては企業の収益性の評価である。(企業買収などになるとまた話は変わってくる)
違いとしてあるのが、企業のどの段階における収益を捉えているかである
Dividend Discount Modelは最終的に株主へたどり着く配当というものに着目し、当サイトでは取り上げなかったCashflow Valuation Modelはフリーキャッシュフローという企業が株主に配当として配分できる余力に着目している。
今回のEarning-based Valuation Modelはさらに収益というものの根源に遡って前者2つのモデルのように“収益の分配”ではなく、そもそもの“収益の創出”というところに着目してearning に着目しているのである。
では実際このEarning-based Valuation Modelがどのようなバリュエーションモデルであるかについて紹介しているわけだが、ここまで読んできた勘のいい読者ならわかるかもしれない。
今までのモデルとしては企業の累積収益の現在価値で計算してきたのである。
今回は収益の創出に立ち返ってこれを行うわけだが、収益のおおもとは初期投資、すなわちここでは0期における簿価資産である。これに今まで、そしてこれから生み出される収益を加算していけば、まさしくその企業が創出する価値の合計となる。これこそまさしくこのモデルが算出するものである。
式は上記の解釈どおり
で与えられる
Rは資本コスト(資本の何%か)だから資産とかけることで実際の額になる。この額が期待されていた収益。そしてNIが実際の収益(当期純利益)。この差額がいわゆるResidual incomeで期待していたリターンを超過した分の額を示す。
まとめると大事なのは誰の視点で企業の収益のどの段階に着目するかによってバリュエーション手法が変わってくるということである。もちろん資本主義の根本にあるリスク・リターンの概念がひっくりかえればこれも変わってくるが、これが変化しない限りこのバリュエーション手法は続くであろう。