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第14回:企業評価をするにあたっての財務指標(基礎編②)

予告どおり今回はより踏み込んだ財務指標としてROAとROCEについて紹介していく。

 

ROA(Return on Assets)

 

1.定式

ROA=  (Net Income-(1-tax rate)×( Interest Expenses)+  Minority Interests )/(Average Total Assets)

 

2.意味

全資産あたりの収益

 

解説していくと指標全体としては要は資産のわりにどれくらい利益を生む出しているか、つまりどれくらい効率よく資産を収益につなげているかを示している。

ここで分母・分子について言及していくとまず、当期純利益から利息関連費用を抜いている。つまりROAはフィナンシャルコストを取り除いた指標であることを理解しなければらない一方で当期純利益というのは税金は考慮したものである。ゆえに引き算したフィナンシャルコスト分の税金は戻さないといけない。これが曲者で、このプロセスがあるため、必ずしもここで用いるInterest Expenseが財務諸表情の利息収支と一致しないのである。ポイントとしてはどこの段階で何に対して税金をかけたかを頭にいれておくといい。次にMinority Interestだが、これはつまり子会社、関連会社の収益を表している。EPSのときにもあったが、ここでMinority Interestを足すのは分母分子に一貫性をもたせるためである。分母のTotal Assetは関連会社のものも含まれているため、当然分子においてもその考慮は必要である。

 

先ほどのEPSと違ってROAはさらに要素分解をして捉えることができる。ここでは以下の定式化に基づいてROAをさらにProfit Margin (限界利潤)、Asset Turnover(資産回転率)

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Profit Margin (限界利潤)はいわば利益率に近いが売上あたりどれくらい利益をあげられたかを示している

Asset Turnover(資産回転率)は資産がどれくらい売上に結びついているかを示している

 

 さらにこれら2つに分解した要素を検討していくと、Profit Marginの変動要因としては財務諸表上の各費用の変化について細かく検討することができる。また、時系列的な比較をしている場合、常にprofit marginの変化の一時的な要因となっているものがないか確認する必要もある。建設費、金融派出商品の損益などがこれにあたる。

 また、Asset Turnoverについても資産別に分析することによって様々な知見を得ることができる。以下3つの例を紹介していく

基本的に定式化はAsset TurnoverにおいてAssetsに該当する部分を以下のより具体的な資産に置き換えるのである。またさらに1年の365日をこれらの値で割ることによってそれぞれ次のような固有な指標として意味が付与される

1.Accounts Receivable(売掛金)による分析

2.Inventory(棚卸資産/在庫)による分析

3.Fixed Asset(固定資産)による分析

 

 

ただしROAにも欠点はある。

 

まず初めに説明したようにROAはFinanicial Expenseが含まれない。つまりこれらのFinanical Expenseが重要な違いを生み出すような業界では適用しづらい。また、Total Assetについてだが、知的財産などは含まれないためこれらを考慮する必要もある。また、Total Assetは取得原価によって価値が算出されており、決して現在価値で計算されていないという点も頭にいれておかなければならない。

 

これらの欠点のうち、初めのFinancial Expenseが含まれないという点を解決する指標が次に上げるROCEである。

 

ROCE (Return on Common Shareholder`s Equity)

 

1.定式

ROCE=  (Net Income-Dividends of Preferred Stock )/(Common shareholder`s Equity)

 

2.意味

株主配当あたりの利益

 

利益に見合った株主配当を得られているか?あるいは逆で株主配当にふさわしい利益水準かということである。

 

これも先ほどのROAのように次のように細分化できる。

 

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Profit MarginとAsset Turnoverについては上で説明したとおりである。新たに登場したCapital Structure Leverageについてだが、Leverageというものをしっかり理解していれば問題ないはずである。leverageというのは簡単にいうと、元手に対してどれくらい持っているかということである。この場合は株主配当に対する全資産の割合になるが、解釈としては株主配当に対してどれくらいの資産を要しているかである。またさらに踏み込んでファイナンスのAsset = Liability + Equityという公式を思い返せば、どれくらい借り入れているかの指標になっているということもわかるはずである。

 

最後のまとめも兼ねてになるが、問題はじゃあこれら3つに分解した要素の考察になるが、結局一番大切なのが因果関係を正しく理解することである。そしてそのためにはまず、深くやる。その次は特定する。この2ステップである。深くやればやるほどそのボトムネックが見えてくるはずであり、特定は何度も繰り返しているが、外部環境、業界特性、そして企業戦略などを注意深く整理しながら考えていけばいいのである。

 

少し長くなって情報量も多い感じだが、ここまで。後のステップでValuationについて詳細に取り上げていくが、ここで紹介した指標はそのファーストステップである。Valuationにはいろいろな指標があるが、極論してしまえば、様々な財務諸表項目の組み合わせである。指標自体が1つのモデリングであり、経済モデルなどと同様、その仮定や性質を正しく理解したうえで使用していかなければならない。