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第13回:企業評価をするにあたっての財務指標(基礎編①)

今回は第12回で企業評価をするにあたっての6ステップのうちの4番目のステップ、財務指標を通じて収益性とリスクを分析するについて触れる。とりわけ最初の、企業の収益性に関する財務指標について触れていく。

 

ここでは大きく企業の収益性に関する指標について2つに分けて考える。

1つ目の分類は単純指標とでも名づけるとすると、すぐに算出できる上にわりとstraight forwardに理解できるような指標である。2つ目の分類としてはより複雑な指標となるが、これは複雑というよりはより細かいとこまで分類して考察することができる指標を指すとする。

 

今回の記事では前者の”単純な指標”についてまず紹介していく。

 

ここではEPSという代表的なそれを補完する分析手法としてCommon-SIze Analysis, Percentage Change Analysisについて取り上げていくが、ここで先に大事なことをメモしていくと、

 

指標はあくまでも指標である。絶対的に正しい、使わなければならない指標なんてないし、指標を覚えるというよりはその指標がどのような意味をもつか、どのように作られた指標なのかを指標の前提などを確認しながら用いたり、作成したりしなくてはならないということである。

 

当たり前だけど大事だから念のため。

 

では早速始めると、

 

EPS(Earnings per Share)

 

おそらく企業分析において最も重要な指標の1つ。

順を追って説明していくと

1.定式

EPS=  (Net Income -  Dividends of Preferred Stock)/(Weighted Average of Common Shares Outstanding)

 

 

2.意味

普通株1シェアあたりの当期純利益

 

分母、分子の構成要素について言及しながら説明すると、まず全体としては企業株1つあたりに対してどれくらい利益を出しているかということになる。分子のNet Incomeは当期純利益をだしている。Dividends on Preferred Stock は優先株に支払われる配当を指しているが、これは分母の普通株1シェアと一貫性を持たせるために優先株の取り分を分子からも除いているのである。

 

ここで1つ大事な前提について言及すると、

 

前提として普通株と交換できるような優先株、オプション、債権などは存在しないということである。つまり、普通株の発行数を変化させる要因は0ということである。もしこれらが存在するのであれば以下のより複雑な調整済みEPSを用いるのが妥当である。

 

Diluted EPS=  (Net Income -  Dividends of Preferred Stock - Adjustments for Diluted Secruities)/(Weighted Average of Common Shares Outstanding+Weighted Average number of shares ISSUABLE from Diluted Secruities)

ここで注意すべきとこは主に2つ

1.調整値としては全ての普通株へ変換可能な金融資産がすべて変えられた場合を前提とする

2.Adjustmentsには変換するためにかかった費用(オプション行使費用など)やそれによる税金の変化分などを含む。

 

EPSは普通株あたりの収益を手軽に把握できるという利点はあるが、一方で以下のような欠点があることを配慮した上で考察していかなければならない。

 

1.普通株の数によって影響されてしまう。

つまり急に発行株式数などを増やしたりしたらEPSは激変する。それゆえ他社との比較や時系列的な比較はしづらい。

2.利益の効率は反映できない

株数と収益という2項目しか考慮しないため、利益を得るためにどれくらい資産を要したかなどについては考察することができない。

 

これらを改善するために指標ではないが、以下2つの分析手法を紹介する。

 

 Common-SIze Analysis

特定の指標を100%とする基準値(だいたい全資産を基準)とし、その割合として財務指標を比較して考察する手法。時系列的にもクロスセクショナルな分析も行えるが、注意点としては%の変化の要因は捉えることができないのでそこを熟考する必要がある。そのために前述した企業分析の6stepのうち最初の3つである、外部要因や業界形態の把握、企業戦略の理解、そして財務諸表の特性をしっかり掴む必要がある。

 

Percentage Change Analysis

そのままだが、財務指標を変化率で捉えること。当たり前だけど、時系列的にもクロスセクショナルな分析も行える。ただし、他の条件は一様に扱う前提なのでそこだけ注意。

 

次回は再び財務指標だが、より洗練された考察のできる指標として主にROAとROCE、及びその掘り下げについて紹介する。