第四回:リスクとリターンの関係性について
これから2回に渡って金融市場におけるリスクとリターンについて紹介していく。
このリスク・リターンを議論するにあたって最も大切な指標がr、すなわち利子率となる。
ここで注意しなければならないのはrの定義がその都度見方によって変わるということである。それは時として銀行の貸し出すときの利率になりうるし、ディスカウント(割引率)という表され方をされるときもある。
しかし最も大事なことは、rというのがどのようなケースであっても金融資産の不確実性を本質的に示しているということである。
ではrを決定するものは何か?
大きくは家計の消費、企業の投資、そして政府や中央銀行による施策によって決定される
これはいわゆるマクロ経済学におけるIS・LM均衡に他ならない
IS曲線は財市場の均衡を表す。均衡利子率と財(マクロ経済学では正確には国民所得)を両軸にとったときに右下がりの性質を示すIS曲線であるが、これは利子率が上がれば企業の資金調達が困難になり、財に対する投資需要が下がることを意味する。
一方でLM曲線は貨幣市場の均衡を表す。均衡利子率と貨幣(マクロ経済学では正確には国民所得)を両軸にとったときに右上がりの性質を示すIS曲線であるが、これは利子率が上がれば家計が貨幣を預け入れ、貨幣に対する供給(貯蓄)が下がることを意味する。
また、政府や中央銀行は財政政策や金融政策によってこれらのIS・LM曲線をシフトさせる。
そのことで(銀行による)均衡利子率rが決定される
ちょっとこの辺あとで読み直したら分かりづらかったのでこちらの記事で詳しくマクロ政策について取り上げています。
では、このプロセスによって決められた均衡利子率rが金融市場におけるリスク・リターンを測る指標かというと一概にはそうとはいえない
というのは、導かれたrは名目利子率であり実際はこれにインフレ率(物価上昇率)が反映されるからである。(反映されたものが実質利子率)
この実質利子率Rは名目利子率r、インフレ率 i とすると
R=r-i で与えられる(実際は1+R=(1+r) *(1+ i ))
実際のアメリカ国債の実質利子率などをみてもインフレ率によって大きく影響されていることが観察できる。
実際の利子率rを決めるにあたって考慮しなければならないもう一つの重大事項が期間である。
当然時間が異なってくればリターンも異なってくる。
それゆえ利子率が示すリスク・リターンを考えるときは主に2つの方法を通じて年間利子率へ換算して比較する
1.1年以上の場合
(1+EAR)^t=1+rt
EARは求める実行利子率、rtはt年におけるリターン(利子率)を示す
2.1年以内の場合
(1+APR)*t=1+rt
APRは求める実質年率、rtはt年(t<1)におけるリターン(利子率)を示す
※もちろん1年以内の場合でもEARによる算出方法を用いることもある、複利する頻度もその都度異なる