第25回:マクロ経済分析
戦後の日本史を勉強してたらバブル崩壊の一連の流れで突っかかって結局マクロ経済をざっと復習することになったからまとめ。
まずexecutive summary じゃないけどエッセンスを詰め込んだ表がこちら
中長期のマクロ分析はここでは取り上げません。とりあえずIS/LM分析を中心に話を進めます。
まずIS/LM分析の一番のゴールは
均衡利子率i*、国民所得Y*を求めること
このプロセスを理解することによってこれらの決定に関わる様々な変数の変化がこれらにどのように影響を与えるかも理解できる。
じゃあ次の質問として、均衡とはなんの均衡か?
IS曲線とLM曲線が均衡するYとiである。
じゃあIS曲線、LM曲線とはそれぞれどのような曲線か?
まずこれが最初のポイントになるが、
IS曲線は財市場が均衡するようなYとiの組み合わせを描いた曲線である。この財市場の均衡は家計、企業、政府という経済の3主体における財の需要と供給が一致するという考えに基づいたものである。
ちなみに財とは人間に物理的・精神的に効用を与えるすべてのモノをさす。
LM曲線は貨幣市場が均衡するようなYとiの組み合わせを描いた曲線である。この貨幣市場の均衡は債券と貨幣という資産ポートフォリオの選択における両者の需要と供給がが一致するという考えに基づいたものである。
ちなみにこの場合の債券とは債権と株式などのことをさし、貨幣を安全資産とするならリスク資産としてまとめて分類される。
では次に実際にそれぞれの曲線の均衡を決める財の需給についてだが、Sを供給、Dを需要とすると以下のようになる。
IS曲線
S=Y
D=C+I+G
供給は国民所得Yである。需要については家計の消費C、企業の投資需要I、そして政府支出Gである。
LM曲線
S=pno+mo
D=pnd+md
pは債券価格を指し、nは債券量、mは貨幣量を表す。小文字のoは市場の供給を示す記号であり、dは市場の需要を表す値である。先述したように貨幣市場の均衡は債券の保有量pnと貨幣の保有量mの合計で決まる。
ここでS=Dという市場の均衡条件を考えると、2つ目の重要なポイントがでてくる。均衡条件S=DをISとLMに対してそれぞれ考えると、
IS曲線
Y=C+I+G
LM曲線
p(nd-no) - md = mo(←pno+mno = pnd+pndを変形)
これらの均衡式でそれぞれ求まった組み合わせ(i,Y)の交点がまさしく最初の目的である均衡利子率i*、均衡国民所得Y*である。
イメージとしてはこんな感じ
ここで補足としてIS/LM分析をするにあたって理解すべき関係式がいくつかあるので先に紹介しておく。
まずIS曲線の均衡式としてY=C+I+Gがあったが、投資需要Iについて大事なポイントが一つ。
Iはiの減少関数である(負の相関関係、つまりiが増えればIは減少する)
なぜこうなるかはファイナンスの記事などを読んでもらって参考にしてもらえればと思います。簡単にいえば利子率が低ければ企業が資金調達しやすいので投資意欲が高まるということ。
次にLM曲線の均衡式としてp(nd-no) - md = moがあったが、債券価格pと貨幣需要mdについて大事なポイントがそれぞれ1つずつ。
・pはiの逆関数である(負の相関関係、つまりiが増えればIは減少する)
・moは国のマネーサプライMと取引需要kYをすると、
mo=M-kYで表せる。(つまり全体のマネーサプライから取引に必要な分の貨幣を引いたものが貨幣の供給量となる)
これらのポイントは次に説明する財政・金融政策を理解するにあたって重要である。
まず政策タイプとしては大きく政府が実行する財政政策と中央銀行によって行われる金融政策に分けられる。
これから政策分析を先ほど紹介した均衡式に基づいて行うが、一番のポイントは
対象となる変数のみを変化させて他の全ての変数は一定とする
では
財政政策はIS曲線(財市場)に関する政策である。
大きく政策としてはGを動かす政府支出の調整と消費需要Cを動かす租税政策がある。
政府支出をたとえば増加させる。そうするとY=C+I+G、Iがiの減少関数ということを思い出すと、以下のような思考プロセスになる
Gの増加→Yの増加
Gの増加→Iの減少(Yが一定に注意)→iの増加
減税するとする。そうするとY=C+I+G、Iがiの減少関数ということを思い出すと、以下のような思考プロセスになる
Tの減少→Cの増加→Yの増加
Tの減少→Cの増加→Iの減少→iの増加
次にLM曲線(貨幣市場)に関する政策である。
大きく政策としてはMを調整することである。
Mをたとえば増加させる(拡張的金融政策)。そうするとp(nd-no) - md = mo、pがiの逆関数、mo=M-kYということを思い出すと、以下のような思考プロセスになる
Mの増加→Yの増加(moが一定に注意)
Mの増加→moの増加→pの増加→iの減少
これ以外にも中央銀行が金融機関に貸し出す利子率iを直接いじる公定歩合操作もあるが、これは結局iを下げることによってマネーサプライMの変化を狙うものであるので本質的には同じである。
少し長くなったが、この記事を通じてすこしでも世の中の金融ニュースに対する理解が深まればと思います。
特別回⑦:これからの時代の証券アナリスト
トップレベルのアナリストの話を聞いていろいろためになったのでここにメモ
殴り書きしたメモを整理すると、だいたい以下の要点にまとめられると思う
1.投資銀行におけるリサーチの意義
2.証券アナリストになるためのアドバイス
3.これからの時代の証券アナリスト
1.投資銀行におけるリサーチの意義
まず投資銀行におけるリサーチの意義だが、ここでは近年の投資銀行の傾向についても触れながらその重要性についてまとめた。
端的にいえば
証券アナリストはこれからの時代においても投資銀行の中で必要な仕事となる
もちろん証券アナリストの話を聞いてるんだから無駄とかいらないとかいうわけないけど、そのバイアスを抜きに聞いても良い内容だった。
まず近年の傾向と投資銀行全体の役割の変遷について言及していくと、はっきりいってその業務において人間の果たせる役割というのは少なくなってきた。トレーディングでは電子取引によってほとんど人間がコンピューターに対して漬け込む隙がなくなってきている。また、投資調査においてもインターネット、エクセルなどの分析ソフトの発達から誰でも分析できるものにはなってきた。
では投資調査にしぼった話で人間にできて機械にできないものは何か?
それはパラダイムシフトへの敏感性とそれに対する仮説を実世界の中で世の中の動向や人々の声を通じてたてることである。
モデルがあってそれにたいして常時インプットをし、それに対応したアウトプットをだしていくコンピューターにこれはできない。もちろんこれは個人的な意見だが、人工知能の発達によってそれ自体も変わっていく可能性は大いにあるとは思う。
2.証券アナリストになるためのアドバイス
次に証券アナリストになるためのアドバイスだが、今日話を伺う機会のあった方は証券アナリストを料理人にたとえていた。
以下要約
”証券アナリストは料理人の関係に近い。師のもとで修行をし、日々の生活の中で師の技を盗みながら、タスクという時間的制約とそこから学び取れる自由をバランスよくこなしていくのである。”またステップアッププロセスも類似する。野菜が切れないシェフがミシュランになれるはずもないし、そこの野菜を切るプロセスをおろそかにしてしまえば、それは一生自分の技術として残って、上を目指す際の弊害となってしまう。また調理器具や調理場を大事に扱ったり整理整頓できないものは必ずどこかで非効率な部分が生まれてしまう。アナリストも同じで財務諸表のデータ分析や計算などの基礎的な部分が正確でなかったりすると立派なアナリストになれるはずがないし、データやファイル管理を杜撰に扱ったらそれは仕事の能率を下げることになる。”
証券アナリストとしてのキャリアを始めるにあたって大事な点として強調されたのが
1.とにかく正確に仕事をこなす
2.人間関係をうまく構築する
の2点である。
3.これからの時代の証券アナリスト
これは自分の意見とあわせて一番大事な点を要約すると、
”アジア民としての意識をもって時代の潮流を長期的な目線で捉えること”
そのためには月並みだけどアジア規模の歴史・知識・価値観の理解、それをレバレッジするためのグローバルなネットワークが必要だなと痛感した。そのためには日々他国の人と交流して学び、いろいろな問題に対していろいろな知見を学び、自分自身も相手にとってバリューを還元できるように自国の知識と意見をもたないといけない。最初は日本から世界(欧米)へ、次に世界でアジア人としての見られる中、日本国民としての誇りと威厳をもつために日本に回帰した。しかし今では世の中が変わり、日本に対する自国意識だけでは世界で渡り合えないという事実から今度は日本から世界(アジア)へ再回帰する必要があるのではないかなぁと。それが自分の人生の次なるステップなのではないかと思うような話でした。
特別回⑥:中国の消費趣向の変化
今回は中国市場のインパクト、とりわけMillennialsといういわゆる80年代から90年代にかけて生まれた若者世代に関する記事を読んだから忘れないうちにメモ。
この記事の大きなメッセージは
・若者世代の趣向がこれまでの中国の趣向と大きく変わっているということである。
もっと自分的にまとめると、
毛沢東による独裁共産主義の一つの時代が終わった中国がグローバル化の波に晒されたことによって、中国国民の趣向が物質的欲求から精神的欲求へ一段階進化したということである。
それを
1.現在消費の主力となってる世代はどういう背景で誕生した世代か
2.その世代が実際どのような趣向を持っている世代であるか
3.そしてこうした世代が主流となる世代によって世の中にどのようなインパクトが与えられか
という順序で説明している。
各コラムのポイントだけ取り上げると。
1.現在消費の主力となってる世代はどういう背景で誕生した世代か
この世代はいわゆる毛沢東の文化大革命以後に生まれてきた世代である。中国が近代化に向けて改革を進めてきた中で生まれたこの世代は一言でいえば以前の世代と比べて、教育とグローバル化意識を背景にそ豊かさを追い求めた世代である。
また消費力という観点からだと、現在の中国の全消費の三分の一にあたる規模であり、対外的にみても日本の10倍弱、欧米のあわせた消費力を上回るものである。
ではこうした特性をもつ世代の趣向はどのようなものか
2.その世代が実際どのような趣向を持っている世代であるか
ポイントは大きく2つで
・限られた予算の中で効用を最大化しようとする合理的な選択をする
・グローバル化とデジタル化に感化されて新しいものを求めて目まぐるしく変化する
このような傾向のため、従来の中国の主要消費の対象となっていたジャンクフードなどの消費は停滞している。また一世代前に栄華を極めていた企業も変わらざるを得ない。一方でグローバル化によって人目にさらされる機会も多くなったため、健康食品や化粧品など自己実現をワンランク高めてくれるような分野の成長は見込める。
これに付随して消費構造もこれまで所得の使い方が食が主流だったのに対して娯楽などへの消費が高まっている。娯楽には映画館やスポーツなどの身近なレジャーから海外旅行といった大きな展開見られる。また、一人っ子政策の影響もあって1人で過ごす傾向があったため、コンピューターゲームなどの需要も高い。
最後に3点目の世の中へのインパクトだが、既存・新規の企業というわけ方で以下のようにまとめられる。
1.若者世代の総数自体は減少しているため、量による成長を遂げてきた成熟市場の企業は変革を迫られる。
2.逆に趣向の変化によって需要が高まった新しい市場については高成長が見込まれる。
第22回:バリュエーション②
次にまたゴリゴリな手法の一つであるEarning-based Valuation Model の紹介である。
ここで復習を兼ねて整理すると、これまで紹介したDividend Discount Model、当サイトでは取り上げなかったCashflow Valuation Modelについてもそうだが、本質的なところとしてすべて企業の収益性に関するバリュエーションを行っているのである。
これは結局企業というのは株主資本によって成立し、その株主たちが自分たちが出資した額(リスク)に対してどれくらいのお返し(収益性)を期待できるかという以前紹介した資本主義の根本的な価値観に基づいているからである。その過程で企業の収益性を生み出す主体である企業というものを分析するのである。つまり最終的なアウトプットとしては企業の収益性の評価である。(企業買収などになるとまた話は変わってくる)
違いとしてあるのが、企業のどの段階における収益を捉えているかである
Dividend Discount Modelは最終的に株主へたどり着く配当というものに着目し、当サイトでは取り上げなかったCashflow Valuation Modelはフリーキャッシュフローという企業が株主に配当として配分できる余力に着目している。
今回のEarning-based Valuation Modelはさらに収益というものの根源に遡って前者2つのモデルのように“収益の分配”ではなく、そもそもの“収益の創出”というところに着目してearning に着目しているのである。
では実際このEarning-based Valuation Modelがどのようなバリュエーションモデルであるかについて紹介しているわけだが、ここまで読んできた勘のいい読者ならわかるかもしれない。
今までのモデルとしては企業の累積収益の現在価値で計算してきたのである。
今回は収益の創出に立ち返ってこれを行うわけだが、収益のおおもとは初期投資、すなわちここでは0期における簿価資産である。これに今まで、そしてこれから生み出される収益を加算していけば、まさしくその企業が創出する価値の合計となる。これこそまさしくこのモデルが算出するものである。
式は上記の解釈どおり
で与えられる
Rは資本コスト(資本の何%か)だから資産とかけることで実際の額になる。この額が期待されていた収益。そしてNIが実際の収益(当期純利益)。この差額がいわゆるResidual incomeで期待していたリターンを超過した分の額を示す。
まとめると大事なのは誰の視点で企業の収益のどの段階に着目するかによってバリュエーション手法が変わってくるということである。もちろん資本主義の根本にあるリスク・リターンの概念がひっくりかえればこれも変わってくるが、これが変化しない限りこのバリュエーション手法は続くであろう。
第21回:バリュエーション①
いよいよバリュエーションについて
バリュエーションにはいくつかのモデルがある。これまで紹介してきた6つのステップなどを厳密に行った上でゴリゴリやるバリュエーションもあれば、時間的な制約からPERのようにいわゆる比率の応用を使って簡素にバリュエーションする方法もある。まずは前者について取り上げていく。
まずどのようなバリュエーションにおいても最も大事なポイントを先に紹介する。
バリュエーションの根本にある考え方として
企業価値はその企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値というものがある
その基本式が
P=C/R
もうこれだ覚えてもらえば十分です。
詳細は省略するが、Cは企業が生み出すキャッシュの額を指し、Rは割引率であるが、会社からみればこれは投資家からすれば自分たちが投じた資産に対する期待収益率であり、株主に還元すると期待される資本の割合ということで資本コストを表す数字になる。
さらにこれに企業の成長率Gを考慮すると基本式が
P=C/(R-G)
になる。ここでも細かい計算ははしょります。
こうしたバリュエーション概念のもと、今回紹介するのはDividend Discount Model
企業価値といえばどれくらい株主に対してキャッシュフローを生み出して株主に還元できるか。理論的に、株主資本の価値は期待される払出の現在価値であり、配当は払出として最も代表的なものであるためここにこのモデルを使う合理性がある。
上記のバリュエーションの式に基づくと、Dividend Discount Modelの場合Cにあたるのが配当、Rが(企業の)資本コスト、Gが企業の成長率である。逆にこの3つの指標さえ求めればバリュエーションができるのである。
まずRの求め方は以前紹介したCAPMに基づく
Ei = Rfree + β(Rmrkt - Rfree)+ε
このような式で紹介したが、個別株の期待収益率はここにおけるRと同義である。
復習を兼ねて説明すると
Rfreeとはリスクフリーリターンをさす。たいていの場合は2~10年の米国債を基準にしていて目安の値としては3~4%である。
次にRmrktとは市場全体のリターンをさしており、年度によってだいぶ異なるが7~12%くらいにぶれる。
最後にβについてだが、これは少し掘り下げる。
βとは個別株とマーケットとどれくらい類似して動くかの指標で
β=σi,m/(σm)^2
のように定義されるとした。
参考記事はこちら。
http:// http://goldninjass.hatenablog.com/entry/2016/04/10/191655
ちなみに実際にマーケットの標準偏差σなんて測れるわけない。そこで個別株は以下3つの性質によってマーケットとの相関が決定されるとすることを利用すると、マーケットのβについては資産のleverage効果に着目すると以下のような式が成り立つ。
・資産バランス(Financial Leverage)
・営業バランス(Operating Leverage)(どれくらい売上のわりに営業費用がかかるか)
・売上や収益のばらつき(variability of sales and earnings)
式のポイントとしてはマーケットのβが赤文字で示されたsystematic risk(営業や資産の分散不可能なリスク)と青文字で示されていた資産バランスによって定義されるということである。
これらの式を駆使することによって(企業の)資本コストRが求められる。
ただし企業を評価するときに必ずしも株主資本を基準に評価するとは限らない。補足として株主資本ではなく、企業の資産全体を評価するときの加重平均モデルを紹介すると企業にとっての資産コストRaは以下の式で与えれられる。
Ra=Wd×Rd×(1-tax rate)+Wp×Rp+We×Re
資産タイプとしてはd=debt, p= preferred stock, e=common equity
Wはそれぞれの資産タイプのウェイトを表している
次にDの求め方
DはD=I+BVt-1-BVt
Dの求め方のエッセンスとしては簿価資産の計算である。今年の簿価資産を求めるには去年の簿価資産に今年の収益を足してそこから配当分を引けばいいのである。この式を直すと上記の式になる。
また最後の成長率Gの求め方だが、これは過去のデータや予測に基づいた数字を用いていくのが妥当である。
あとは成長率Gの設定の仕方やDの使い方などのモデルの応用になるが、ポイントとしては
・成長Gにしろ、配当額Dの分類としては、可変的な成長(配当)とそれ以降定常とする成長(配当)があり、モデルの時間区分もそこを考慮するべきである。モデルの応用については省略させてもらいます。
第23回:バリュエーション③
ゴリゴリやるバリュエーションを紹介したところで次はいわゆるPERなどの比率指標を使ったバリュエーションの紹介である。
ブラックスワンの記事を読んだ人はご存知だと思いますが、簡素なモデル化ほどそれによって生じる誤解やはしょられる部分が多くなるので使う際には注意を。今回もそのケース。
まず初めに指標を使ったバリュエーションの一番大事なポイントにふれておくと、
指標そのものの絶対的な値に意味はないことが多い。もちろん企業成長率、収益率、リスク、割引率の設定などが明確に分かっていれば基準値としてだいたい企業の実績とその企業に対するマーケットの評価値は得ることができるが、むしろここにおいて大事なのはずばり比較である。この比較は過去の企業の成績との比較もしれないし、業界平均との比較になるかもしれない。
ゴリゴリ系のバリュエーションと一番異なるところがこうした企業成長率、収益率、リスクといった企業のファンダメンタルズがマーケット情報に内包されていると仮定することによって簡素なバリュエーションができるところにある。それゆえ一般的に使われている比率指標に関する正しい理解を得るためにはもととなるゴリゴリ比率指標を紹介してそこから派出して理解する必要がある。
では実際に比率指標について紹介していくとしよう。
ここでは大きく2つValue to Book Ratio と Value to Earnings Ratioについて取り上げます。
まず初めにValue to Book Ratio だが、要約するとこれは
企業の簿価資産に対して企業がどれくらい本質的な価値を持っているかという指標である。指標は手軽なものと紹介したが実際Valueとの比率になっているものは結局予測値なども利用してValueを出さないといけないので先述したようにゴリゴリな指標である。
以下のような式で与えられる。
Value to Book ratio = Value of Common Shareholders` equity / Book Value of Share Holders` equity
一応念のためにいっておくとCommon Shareholders` equityは株主資本のことを指していて、これがベースとなっている。
ではさらに実際にこの割合がどのように算出されるかというと、前回の記事で紹介したresidual income valuation model(別記事参照)に基づくと以下のようになる。
まず式の意味についてだが、
リターンが簿価資産の期待リターンに比べてどれくらいアウトパフォームしてきたかの累積的な価値である
青文字が期待リターンに比べてどれくらいリターンがアウトパフォームしてきたかを指し、赤文字がそれを簿価資産でスケール化、Σは累積を表して、分母はそれを現在価値に直したものである。(1は初期状態を表している)
いってしまえばゴリゴリですね。じゃあさっき言ってた比較やら手軽やらは?まさしくこれを簡単にしたのがPBRである。
PBRは以下の式で与えられる。
そして式をそのまま解釈すると、時価総額が簿価純資産の何倍(上式はシェアで割って一株あたり)、つまりわかりやすく言えば”株主の投資したお金が何倍に増えたか(評価されているか)”を示している
次にValue to Earnings Ratioについてだが、要約するとこれは
企業の収益力に対して企業がどれくらい価値を持っているかという指標である。
基本的な流れは先ほどと同じでValue to earnings ratio自体がもとのゴリゴリ指標であり、これをマーケットの評価を使って簡素化したのがかの有名なPERである。
以下のような式で与えられる。
Value to Earnings ratio = Value of Common Shareholders` equity / Earnings for a single period
これは先ほどと異なり、これまでのバリュエーションにおける6つのステップをしっかり踏んでいればその算出した値の割り算ということがわかる。
また、PERについてもそのまま以下のようになる。
そして式をそのまま解釈すると、時価総額が当期純利益の何倍(上式はシェアで割って一株あたり)、つまりわかりやすく言えば”ちゃんと会社の価値に見合った株主利益還元を行っているか”を示している。
PERがとりわけ好まれる理由としては会社が将来にわたって生み出すとされる価値を反映した企業価値と現在生み出している収益が一括してみれることにある。
特別回⑤:VRとARの今後について
VR(仮想現実)とAR(拡張現実)についての記事を読んだから基礎知識程度だがメモ
まず簡単に理解のためにまとめると、VRはよくみるあのいかついギアつけて疑似体験的するやつ。ARはSF映画とかでみるホログラム映像的なやつ。
まず両者の最近の傾向について説明すると、VR/ARブームがきたのは今回が初めてではない。95年くらいに一度きたりしたが、そのときは技術の発達が追いついていなかったら画質が悪かったり、プロセッサーのせいで処理速度が遅いなどの問題があった。しかし、今は技術の発達によってVR/ARは実用化へ着実に近づいている。
次に実際VR・ARが応用される分野についてだが、以下のようなものが挙げられる。
1ゲーム
2ライブビューイング
3小売
4不動産
5教育
6医療
7軍事
である。このうち消費者が需要の促進ドライバーになるのがゲーム、ライブビュイング、ビデオエンターテインメントであり、残りが法人や政府による需要である。割合としては6:4くらいである。また、短期的にはゲームやライブビュイングなどが需要のドライバーになり、長期的に他の分野にも応用されると思われる。
それぞれの課題を挙げながら説明していくと
1ゲーム
プレステーションやXBOXなど初めとしたテレビゲームを指す。より洗練されたゲーム環境を求めるコアなユーザーから浸透が始まるとされるが、ゲームのプラットフォームが既存のものとはまったく異なったもので、そこから開発しないといけないのが課題である。
2ライブビューイング
スポーツ観戦やライブなどあたかも実際の会場にいるような体験をさせてくれる。需要も十分にあると同時に家で生の体験をしたいという新たな顧客層の開拓にもつながる一方で社交的な雰囲気が失われるという課題がある
3小売
小売には様々な応用がある。たとえばe-commerceなどのオンラインショッピングにおいて実際の商品についての利用体験につながる。車などの疑似体験にも応用できる。様々な目的性に応じたVR開発を行わなければならないのが重要な課題である
4不動産
エージェントなどが活用できる。実際に赴かなくても家の様子がわかるということで消費者経験を高めることができる。
5教育
ipadが教育に取り組まれていったようにVRは教育のありかたを小学校から大学生まで大幅に変えるポテンシャルを秘めている。しかし、逼迫した教育予算が一つの課題となっている。
6医療
VRを活用することによって手術前に患者のデータやカルテルをARでみたり、シュミレーションなども行うことができる。情報管理が一つの課題となる。
7軍事
すでに一部では利用が始まっているが、軍事訓練や作戦のシュミレーションなどに使うことができる。しかし忠実さが課題となっている。