吉野家とマックをこよなく愛する外資金融マンwww

目的は利他的、されど体裁は利己的。矛盾。くそ。

第20回:企業分析における思考プロセス

バリュエーションのための7つのステップをこれまでやってきたが、これまでやってきたことを体系的に理解したくてちょっとまとめ。

 

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一番大事なストーリーをまとめると、

 

〇〇のような外部環境・業界に企業はいる(STEP1)

この中で企業は〇〇という戦略で□□なポジションを目指している(STEP2)

実際の企業は財務諸表に基づくと〇〇なパフォーマンスをしている(STEP3)

 

ここまでが分析編(赤枠)

 

これに最後のステップとして企業は〇〇のような業績が予測できる、だから〇〇に基づいて分析する〇〇のようなバリュエーションとなる

 

これがメインのストーリーである。

詳しいところは各回で。

今回はまとめなんでこんなとこで。

特別回:世の中の大きな潮流の理解(過去から現在編)

社会人になる前ということで、世の中の大きな潮流について基本的な理解を深めるために図式化しました。

 

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こうやってみると、意外と物事の流れを時系列的に把握するのが難しいなぁって感じます。

 

ここでは大きくエネルギー、宇宙、金融、コンピューター、インターネット、SNSというふうに分類したが、分類の仕方なんて様々だし、これ以外にも重要な時代の潮流ってたくさんあるはず。

 

乏しい歴史知識と主観をベースにした世の中の流れになってしまうが、自分の考えるストーリーはこんな感じ。

 

戦後の資本主義世の中の最初の大きな傾向としてはまずなにより、米ソの宇宙開発競争がある。米ソの宇宙開発競争自体はソ連崩壊まで続く形となったが、米ソの宇宙開発競争というものは開発そのものよりもどちらかというと米ソの覇権争いという大きな枠組みの中の一つの競争としてあったと位置づける方が正しい。どちらかというと米ソの宇宙開発競争の中でそれをより高い技術レベルを開発を促進しようとした結果、国家の莫大な資金とサポートを背景にエネルギーとコンピューターという二つの分野が発達したところに注目するべきである。もちろんこれら2つの分野の急速な発展が米ソの宇宙開発競争のみに起因したわけではないが、大きく貢献したことは間違いない。

 

エネルギーは核開発に伴って発達した原子力発電、さらには第二次世界大戦後独立と開発が進んだ中東諸国を中心とした新しいエネルギー源としての石油が登場した。原子力発電は要求される技術レベルの高さ、また核戦争に反対する世論と度重なった原発事故によって急激な伸びは阻まれた。一方で原油はその豊富な埋蔵量、そして汎用性の高さからエネルギー革命といわれまでに社会に浸透した。70年代には石油危機で顕著になった偏在性という欠点からエネルギーポートフォリオの分散、さらには新興国の急激な成長によって持続可能な開発が叫ばれて次世代エネルギーの開発にもつながった。なかなか発電という観点からベースロード電源として代わるエネルギー源が見つからない中、近年の出来事としては2012年のアメリカ・カナダにおけるシェール革命によってOPEC諸国が主導を握る構図から新しい勢力図が誕生するように思われたが、リーマンショック後の世界的不景気の影響もあってまだいまひとつというところである。

 

次にコンピューターの発達についてだが、米ソの核開発競争の枠組みで捉えると、正確なミサイルや宇宙船を作るためには緻密な計算が必要だった。その役割を果たしていたのがまさしくコンピューターである。今のような手軽なPCのようなものではなく、イメージとしてはスパコンみたいなごついものが主流だった。それゆえコンピューターというものは70年代くらいまでは一般市民にとって親しみのあるものではなかった。コンピューターの革命的な時期は70年代から90年代にかけてである。IBM、 APPLEMICROSOFTなど今でも市場を支配するメーカーが誕生し競争を続けた結果、誰でも保有できる今のパソコンが誕生したのである。

またこうしたコンピューターの発展とともにインフラ環境が整ったことは間違いない。90年代にはインターネットが実用化され、www(worldwideweb)という言葉が示すように世界がパソコンを通じてつながり始めたのである。こうしたインターネットの普及とともに情報が重要な資産になりはじめたのである。95年には情報をネットでつながれた世界中から拾ってこれる検索エンジンを扱うYahooが誕生したり、2002年には今世紀世界を最も変革させた(させている)企業の1つであるGoogleが誕生した。また、世界中の人々を”つなぐ”という意味ではFacebookが2012年に上場し、文字通り人々をネットを通じてつなぎ、それと同時に情報も世界中に瞬時に共有されるような世の中になった。これらは2010年から2012年にかけて起きたアラブの春にも見られるように社会変革を起こすまで影響力の大きいものになってきた。またGoogleはIoTや人工知能など次なる世の中を実現する先駆者となっている。

 

こうした技術的な世界とはまた異なった路線を歩んでいるのが金融業界である。金融資本主義という言葉が表すように金融は世の中の”システム”である。世の中がお金という共通価値基準に基づいて動き、経済という理論的枠組みの中で捉えられる限り、金融は世の中の様々な分野を俯瞰できるが、他の分野の中で金融全体を俯瞰することはできない。少なくとも僕はそう考える。

この金融の大きな潮流について要約すると、まず1929年に起きた金融恐慌を機にシステムとしての厳格さは増した。しかし以後、世界大戦後の世の中の建て直しと経済の再生に向けて金融の自由化が進んだ。また先述した技術の発達に伴って金融業界そのものも技術的恩恵を受けた。技術の発達によってよりはっきりシステムを体系化し、理解することができるようになった。しかしこれは諸刃の剣であり、同時に新しい金融商品の登場などに代表されて金融というシステムが一層複雑になった。複雑になった金融システムはついには複雑になりすぎて理論では立証できるものの現実世界においてどのように動いているのか人々が把握できないくらい手に負えないものになってしまった。この金融資本主義の肥大化ともいえる現象の結果の1つとして近年起きたのが2008年のリーマンショックである。詳細は以下の記事を参考にしてもらえればと思います。

goldninjass.hatenablog.com

リーマンショック以降、再び金融規制の波が到来した。一時期は栄華を極めていた投資銀行なども一時期ほどの勢いはなくなった。代わりに技術の発展とともに仮想通貨やフィンテックなど新しい金融の形が生まれてきた。しかし今のところ、金融資本主義という大きなパラダイムにとって代わるようなシステムが誕生するとは考えにくい。

 

もちろん初めに述べたとおり世の中の潮流を捉える切り口などたくさんある。なので今まで挙げた話は世の中の潮流を捉えるあくまでも一例として位置づけてもらえればありがたいです。

 

 

 

 

第19回:マイナス金利に関する解説

もう導入されてしばらくたつけど、やっぱり理解されずに社会人になるのはあれかなぁと思って取り上げます:マイナス金利

 

マイナス金利の解釈はそのまま。

通常お金に預ければその金利分預け額の何%かの利子がつく。マイナス金利ということは-〇%もらえる、つまり〇%払わなくてはいけないということになる。

 

ではここで大事なことは何か?論点は大きく2つある。

 

1.日本のマイナス金利は具体的にどのようなものか?

2.マイナス金利を設定することによってどのような効果があるか?

 

まず日本のマイナス金利は具体的にどのようなものかということだか、ポイントは2つ

 

1.日銀に当座預金のある金融機関が対象になる

2.日銀の当座預金の平均残高を超過した分のみがマイナス金利対象となる

 

まず1についてはそのままである。つまり私たちが銀行にお金を預けて利息を得るように銀行も日銀にお金を預けて利息を得ている。これらの銀行がマイナス金利の対象になる。

2についてだが、これはけっこう大事なポイントである。詳細は省くが、現在銀行は日銀に当座預金として230兆円くらい預けている。もし単純にこれに対してマイナス金利ー1%かかったら2300億くらいの収益ロスになってしまうが、実際この平均残高超過分という制約を設けることによって当座預金のうち、対象となるのは10-20兆くらいになって銀行への影響も限定的になる。

 

次に2つ目にして最も大事な論点である結局マイナス金利によってどのような効果があるか、そして実際いまのところどのような効果が出ているかについてトップダウン式に説明していこうと思う。

 

1.日銀

 

まず目的を端的にまとめると

 

”市場のお金の循環をよくすること”である。

 

つまり基本的な流れとしては

マイナス金利の導入→銀行が日銀にお金を預けなくなる→代わりに企業に投資したり、個人に融資する→企業や人々がお金を使うことになる→景気が上向く→物価上昇

のようになる

 

補足すると、これは日銀の他の金融政策が行き詰っていたという一面もある。

これまでの日銀の金融政策としては量的緩和と質的緩和という二つの策が講じられてきた。量的緩和には日銀が銀行などの国債を買い取ることによって銀行の手持ち金を増やしてそれを企業投資などに運用してもらうという意図がある。一方質的緩和は前述した目的を日銀が買い入れ対象とする金融商品などの幅を広げることによって行おうとする。

 

しかし、これらがうまくいかず、今回日銀はリーマンショック以降、ずっとゼロだった金利に対してマイナスという領域に踏み込んだのである。

 

これとは別にマイナス金利にはもう一つ効果があるが、これが日銀の意図したものであるかどうかは専門家ではないので定かではない。

 

そのもう一つの効果とはずばり

 

通貨安の促進 である

 

のちにそのプロセスを説明するが、自国の金利が下がれば当然それを保有して預けるよりも外国の通貨に換えてより高い利息をもらった方がいい。そうすると自国の通貨を売り、外国の通貨を買うということが起きて結果として自国通貨安となる。

 

ただし通貨の強さというのは非常に多くの要因によって変動するため、これが目的とは考えづらい。また現在の円相場をみても効果がでてるとは限らない(今日時点で108円付近)

 

2.銀行

 

銀行への影響を端的にまとめると、

 

”被害をこうむる”

 

なぜ被害をこうむるか?

当然今まで日銀に預けていればお金になっていたものがなくなるどころかマイナスになる。そりゃあ被害だ。さらにこれはまだ確定的ではないが、マイナス金利によって銀行の多くは企業にお金を貸し出して新たな収益源を確保しなければならない。しかし、そのためにはより貸しやすい状況を作る必要がある。そうすると必然的に金利が下がるはずである。これは(預金へ銀行のつける利子も低くなるので)一概にはいえないが銀行にとっては貸し出しているお金に対して少ない金利がつくのでマイナスになるといえる。

 

3.企業、個人

 

企業・個人への影響を端的にまとめると、

 

”人それぞれである”

 

なぜこうなるか?

 

 簡単にいえば、お金をたくさん預けている人は長期的にみて損する可能性があるし、逆に(住宅ローンなど)資金調達するような人はより安い利息でお金を借り入れることができるのでプラス効果があるといえるからである。

企業についても同様である。

 

もちろんマイナス金利の政策目的が達成されてその結果経済が活性化されれば多くの人が恩恵を受けられるはずなのでそれが達成されるのが1番だが、いまのところその兆しがなかなか見られないのが現実である。

第18回:予測のための7つのステップ

今回は企業分析・財務諸表分析・それらを理解するための指標について一通り紹介し終えたというところで実際の企業評価の前のステップ(6/7)になる”企業業績を予測する”ステップを紹介する。

 

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グラフを作成するのがめんどくさかったので、そのままノートを転載したのですが読めないですね。やっぱり汚いですね。

 

ってことでまず初めに7つのステップを紹介

 

1.売上高、及び収益を予測する

2.予測した売上高や収益を達成するために必要な営業費用などを算出する

3.営業利益を導いた上でそれに必要な資産・負債などを算出する

4.算出した負債をもとに利息収支、および投資関連の収支を算出する

5.経常利益を導いた上で特別費用、税などに関する予測をたてる

6.財務諸表の収支が合うように調整を行って当期純利益を導く

7.営業・投資・財務活動それぞれに対してキャッシュフローを導く

 

また、予測にあたっては必ず次の4点を意識すること

”客観性、一貫性、包括性、”

 

最後に一つ付け加えると、予測の過程においては

 

大事なのはここまで取り上げてきた企業評価のための7つのステップ(上記とは別)のうち、ここの予測のステップではこれまで紹介した業界・外部環境分析、企業戦略分析、財務諸表分析、収益性とリスクに関する比率といったものが予測の前提や根拠をたてるにあたって重要な役割を果たすことを思い出してほしい。

個別のステップについては過去の記事を参考にしてもらえばと思います。

 

 

 

 

 

第17回:行動経済学とファイナンス、およびそこにおける投資家の役割

今日は行動経済学的な観点からみたファイナンスおよびそこにおける投資家の役割について触れていこうと思う。

 

最近必死にバリュエーションとかファイナンスばっかやってるから他の勉強もやらないと(ぼやき)

 

ファイナンスにおける行動経済学を議論するときに中心となるのが

Efficient Market Hypothesis である。

 

これを一言で要約すると

 

“マーケットは正確に情報を反映している” 

 

という主張である。

 

実際このEfficient Market Hypothesisには“正確に情報を反映する”という文句が指す度合によって主に3つの分類がある。

 

簡単に説明すると

1.Weak→企業の過去の株価や収益を反映している

2.Semi- Strong→weakに加えて企業のファンダメンタルズ(戦略、財務諸表、性質)なども反映している

3.Strong→インサイダー情報も含む、企業の業績活動に関わるありとあらゆる情報を反映している

 

現実としてはstrongと思っている人はほとんどいない。逆にstrongが成立しているのであれば、証券アナリストのように株価や企業業績について分析する必要などまったくなく、いわば情報をいかに早く入手するかの勝負になる。ちなみに株価は過去のデータから予測不可能なものであるとするランダムウォークにはこのEfficient Market Hypothesisが背後にある。(つまり予測可能な部分は全て株価に織り込まれているとする考え方である)

 

しかし参考までにだいたいある情報がマーケットの適性価格として株価に反映されるまでは10分程度しかかからないという研究もある。

 

裏を返せば、マーケットの情報反映がstrongでないからこそ分析という仕事が成立する面もあるの。

 

以下株価や企業業績の分析の意義がある理由を行動経済学的な知見とあわせて要約すると

1.情報の非対称性が存在する

証券会社のように分析を専門としているような企業であれば当然一個人よりも情報が多いことが考えられるし、効率もいいと考える。その点では証券会社はそれを生かしてマーケットには反映されていない情報に基づいた分析ができる

 

(ここから行動経済学的な観点からの議論になるが)

 

2.必ずしも合理的な選択が行われているとは限らない

ここで注意なのが、必ずしもマーケットにおける選択として合理的でないだけであって別の目的を達成するにあたっては合理的であるかもしれない

 

3.仮に情報が完全であっても

   1.誤った分析を行う可能性がある

                         誤る理由としては経験則的なバイアス、過信、統計学的な限界(サン

       プル数)などが挙げられる。

   2.情報解釈の違いがある

                         情報のフレームワークの方法、解釈の方法によっては同じ情報でも異な

       った結果を導く可能性がある。

 

マーケットの機能ということに関してはこのようにどこまで反映しているかという議論が存在し、その捉え方によって投資家やアナリストの戦略に違いがでてくることを理解してもらえればと思います。

第16回:CAPMモデル

今回は現在の金融資本主義が席巻する世の中の基盤ともいえるリスク・リターンについての体系化したモデルであるCAPM(Capital Asset Pricing Model)について紹介する

 

大事なポイントだけ先に紹介する

 

CAPMとは何か?

 

CAPMとは投資や資産評価におけるリスクとリターンの関係性を体系的にまとめたフレームワークである

 

次に個別株の評価について数式など並ぶが最も大事なポイントは

 

個別株のリターンプレミアムはマーケットプレミアムベースとしてあとはその株とマーケットとの相関によって決まる

 

最後にポートフォリオについてだが、最も大事なポイントは

 

ポートフォリオリターンは構成要因の割合で決定するが、リスクについては組み合わせ次第でリスクが軽減する(構成株の相関から)

 

先の要約したところで次に個別に紹介していく。

 

先ほど要約したように3段階に分けて説明する

1.CAPMそのものについて

2.CAPMにおける個別リターンとリスクについて

3.CAPMにおけるポートフォリオリターンとリスクについて

 

1.CAPMそのものについて

 

リターンを得るにはそれに見合ったリスクをとらなければならない。これが今の資本主義社会の金融市場における基本的通念として人々のなかに前提してある。

 

それを体系化したのがCAPM

 

このモデルの前提としてはざっくりまとめると

 

・人々が上述した基本通念を念頭において合理的に行動している

・一個人などによってマーケット全体が影響されることがない(冨の割合てきに)

 

 

実際もしマーケットが正確に情報を素早く反映するという前提も成立していれば、金融市場における人々の行動は同じものとなる。そして全員がマーケットが最も合理的なポートフォリオとしてマーケットと同じポートフォリオをもつはずである。(もし裁定機会があればすぐに実行されて均衡状態になるはずだから)

 

しかし実世界では人々は様々なポートフォリオを組む。というのは必ずしもマーケットが正確に情報を反映するとは限らないなど前提部分で崩れるところがあるからである。

これについては行動経済学的な理論とあわせて別の回に紹介する。

 

では実際にこのCAPMにあわせてリスクとリターンがどのように株式市場において定義されているかを紹介していく。

 

 

個別リスク→第五回で説明したように、過去のデータに基づいて標準偏差σという形で考察していく

 

個別リターン

ここで注意することはCAPMモデルは“期待”に基づくものである。

 

個別株の期待リターンEiは

 

f:id:goldninjass:20160424203118p:plainで与えられる

 

これはリスクフリーリターンにマーケットのリスクプレミアムをβというパラメーターにかけたものである。

 

復習すると、リスクプレミアムとは

とるべきリスクを回避して利益の金額を固定するために支払うコストであり、逆をいればこのコスト分のリターンが得られるという考えであるZero-Sum Gameeを仮定して)

また、βとは個別株がマーケット全体とどれくらい似たような動きをするかのパラメーターである。もし個別株がマーケットとまったく同じ動きをするのであればβ=1だし、マーケットよりもリターンが大きい場合はβ>1となる

 

このβの算出方法についてだが、以下の式で与えられるとされる

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つまり個別株とマーケットの共分散をマーケットの分散で割ったものである。

 

どうしてこのような式になるかだが、

 

次にポートフォリオのリスク・リターンについてだが、

 

リターンは単純に E(prt) = Σωi*E(ri)、つまりポートフォリオを構成する各個別株のリターンを割合で加重平均したものである。

 

次にリスクについてだが、これは単純な加重平均とはならない

というのは各々の個別株同士のリスクの相関が存在するからである。

 

式はそのため次のように定式化される

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複雑な式に見えるかもしれないが、要は各々の共分散のウェイトである

 

 

特別回④:非線形モデルの解説(基礎編)

今回は非線形確率モデルについての解説

たまにロジット・プロビットといった確率モデルを耳にすると思うが、それらがどういう意味合いを持って用いられているかもあわせて解説していこうと思います。

 

まず初めに非線形確率モデルとは何か、そして何のために用いられているかをまとめると

 

”線形モデルでは正確に表すことのできない質的な説明変数をその決定の背後にある潜在変数の考察によって説明していくモデル”

さらに詳しく踏み込むと(どのようにそれをやるかというと)、

”説明変数の示す事象の潜在変数がある臨界値を超えたら事象が起こるとして、事象の起こりうる確率を潜在変数の累積密度関数として考察すること”である

 

仮定は次のとおりである。

仮定

1.事象Yの潜在変数Y*をY* = α+βX+εと定義する

2.Y*>0となったら事象Yが起こるとする

また、これら2つの仮定に基づくと

Y*>0→Y *= α+βX+ε>0→ε>-α-βXとおける

そこで最後の仮定

3.εの密度関数をP、累積密度関数をFとする

 

これらの仮定に基づくと事象Yが起こる確率は次のように表せられる。

 

P(Y=1)=P(Y*>0)=P(ε>-α-βX)=1-F(α-βX)

 

ここで一つ問題となってくるのが誤差項εの分布の仮定である。

この仮定によって非線形確率モデルの性質が変わる。ロジットやプロビットもこの分布の仮定の違いである。以下両者を取り上げていく。

 

1.ロジットモデル

 

上述したい潜在変数(正確にはε)の確率分布、及びYの累積分布関数とししてロジスティック分布を当てはめたものである。

 

ロジスティック分布を簡潔にまとめると、

 

”釣鐘型の正規分布に似ている分布”

 

イメージとしては密度関数、累積分布関数がこんな感じ

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(Wikipediaより引用)

 

ではこのロジスティック分布を通じてどのように分析して解釈するかについて解説すると、

 

まずロジスティック分布の累積分布関数に基づくとYが起こる確率は

 

P=1/(1+e^(-(α+βx)) ) 

 

(ロジスティック分布の累積分布関数は厳密にはeの指数がx、s、μという3つのパラメーターで決められる関数とされるが、μ=0、s=1の仮定を置くとそのままXの単独変数で決まる関数となる)

 

非線形は線形モデルの最小二乗法のように直接分析してパラメーター推定はできないので、線形の形に直してα、βのパラメーター推定を行うのである

 

上のPの式を使って保有確率と非保有確率の比をとると

 

P/(1-P)=e^(a+βx) という式が得られ、さらに両辺の対数をとると以下のような線形モデルの形に変換できるのである。

 

Ln{P/(1-P)}=a+βx

 

ここでは詳しく説明しないがこの式を最尤法に基づいて繰り返し計算して最も適切な値を導くのである。

簡単に紹介すると

ある事象の仮定した理論値の分布が実際の観測値の分布に最も近づくようにPを定義する手法である。

 

Ln{P/(1-P)}=a+βxという式を再びもってくる。

 

上記のプロセスで算出された係数α、βの解釈についてだが、

 

対数が%変化を表すことを思い出すと、X1単位の増加が事象の起こりうる、えないのオッズを平均してβ上げる(下げる)ことを意味する

 

大事なとこだけもう一度おさらいすると、ロジットモデルについては以下のようになる

1.線形モデルでは正確に表すことのできない質的な説明変数をその決定の背後にある潜在変数の考察によって説明していくモデル

2.説明変数の示す事象の潜在変数がある臨界値を超えたら事象が起こるとして、事象の起こりうる確率を潜在変数の累積密度関数として考察する

3.事象Yの累積分布関数としてはP=1/(1+e^(-(α+βx)) ) で表せ、正規分布に似たロジット分布を用いる

4.線形的なパラメーター推定をするために事象のオッズ比であるロジット変換Ln{P/(1-P)}=a+βxを行った上で、ある事象の仮定した理論値の分布が実際の観測値の分布に最も近づくようにPを定義する手法である最尤法に基づいてパラメーター推定をする。

5.係数の単位あたりの変化がβの係数分、事象のオッズ比の増減につながる

 

2.プロビットモデル

 

次にプロビットモデルについてだが、本質的な部分はさきほど説明したロジットモデルと変わらない。仮定において事象Yの累積分布関数が標準正規分布になっただけの話である。

ちなみに正規分布については以下の記事で簡単に取り上げている

goldninjass.hatenablog.com

 

では考え方のフレームワークは身についているとして、ここでは標準正規分布の累積密度関数と変換方法、そして係数解釈は紹介する

 

正直式も紹介する必要はない気がするが、式は以下のようになる

standard normal distribution

 

ここでZは-α-βXにあたる。

 

ここで先ほどのロジットモデルと異なるところとして、ロジット変換のようにパラメーターα-βXを線形の形で分析したいのだが、有意な形で導くことができない。

 

このようなパターンではパラメーターの保有確率への限界効果に注目するのである。ただし、ここで注意しなければならないのが、βの値が直接確率への限界効果にはならないということである。

 

以下の計算をみれば自明である

 

dP/dX = d(1-F(-α-βX))/dX = βf(-α-βX)

 

積分布関数を微分したら密度関数になることからfは標準正規分布の密度関数である。つまり限界効果の解釈は以下のようになる。

 

dP/dX = βf(-α-βX)

 

強いて言葉をつけるのであれば、

 

Xが1単位増加するたびに事象Yの起こりうる確率が標準正規分布の密度関数をYの潜在変数の誤差項ε(潜在変数のパラメーター)で評価した値にβをかけた分だけ増減するということである。

 

 

だいぶ専門的になってしまったが、こんなところ。細かい計算とかは申し訳ないけど自分でやってください笑

 

次回はこれらのモデルがファイナンスやバリュエーションのモデルで実際どのように使われたかの例を紹介します